海外で働くと言えばアメリカを思い浮かべるのが、日本人にとっては自然かもしれません。戦後の「追いつけ追い越せ」の時代から、渡米して最先端の技術や知識を学ぶというのが多くの先人の実践してきた道であり、また特にIT分野ではシリコンバレーが一大拠点となるなど、日本人にとっては常にアメリカがお手本になっています。会話が通じない割には英語教育が盛んであり、海外旅行でアメリカに出掛けた経験を持つ人は多く、また留学経験があったり帰国子女という人も少なくありません。
日本では名刺交換のマナーにもやかましいものですが、アメリカでは実を重視します。そのため初対面で名刺を交換するといってもラフなもので、名刺の肩書や役職名にはあまり興味がなく、それよりも対面している相手の顔や第一印象を大切にします。
またマナーで気を付けたいのが、アメリカでは常にレディーファーストということです。エレベーターから下りる順序でも、取引先の男性よりも、勤め先の社長よりも、常に女性が一番最初です。
「Thanks God, It’s Friday.」すなわち、金曜日であることに感謝するという気持ちは、日本人の「花の金曜日」にも通じるものです。1週間の中で金曜日と言えば、翌日には労働から解放されて、週末の2日を休めるという嬉しい日です。
また「Happy hump day」とは、水曜日のことです。これは週5日の労働の真ん中の水曜日のことで、ラクダのコブ(hump)に例えています。水曜日を過ぎれば、後は楽しい週末に向かって下るだけというわけです。スタイリッシュにスーツを着こなしたアメリカのビジネスパーソンも、1週間が始まれば、指折り週末までの日を数えているという胸の内が覗えます。
そしてアメリカでは、自分の得意・不得意をよく弁えた上で、実力を巧みにアピールし、尚且つその証明としての高いパフォーマンスを実現する必要があります。そのため日本のように上司の顔色を窺ったり、役職に怯むことなく、自分の昇給や昇進を、上司や社長に直接掛け合うこともあります。
遠慮や謙遜の美徳は通じず、経過よりも結果を重視するアメリカ流のビジネス習慣では、評価も非常にシビアであり、役に立たないと判断されれば即刻居場所を失うほど厳しいものです。そして特に営業職では、実績が明確に反映される歩合給制の場合が多いようです。
一方アメリカ人には、この強烈な自己アピールの反面、責任転嫁や責任放棄が目立つことから、公私ともに文書で証拠を残すという習慣が広まっています。分厚い契約書に一々細かな約束事を記載するのは、プライベートでも一般的なのです。